はじめに(このシリーズの立ち位置)
このシリーズは、
Debian 13(Trixie)で NVIDIA GPU を「確実に」「安定して」「再現性をもって」使うための完全記録です。
対象は以下のような人です。
- Debian を使いたいが NVIDIA で毎回つまずく
- Wayland / Xorg / nouveau / nvidia の関係が曖昧なまま進んでいる
- Steam / Vulkan / CUDA / AI を全部ちゃんと使いたい
- トラブったときに 自力で戻れる構成を作りたい
逆に、
- 最短で動けばいい
- 理由はどうでもいい
という人には向いていません。
このシリーズは 「なぜそうするのか」を全部書く 方針です。
Wayland と Xorg とは何か(まずここを混同しない)
Wayland と Xorg は GPUドライバではありません。
これは、
GPUが「どうやって画面に絵を出すか」を決める表示システム
です。
整理すると:
- Wayland / Xorg
→ 画面をどう表示するかの仕組み(表示サーバー) - NVIDIA / nouveau
→ GPUをどう動かすかのドライバ(エンジン)
役割がまったく違う。
Wayland と Xorg の性質の違い
Wayland
- 新しい設計
- セキュリティ設計が現代的
- 入力・表示の遅延が少ない
- GNOME のデフォルト
ただし、
- NVIDIA のプロプライエタリドライバとの相性が環境依存
- Vulkan / Proton / 録画 / フック系で問題が出ることがある
Xorg
- 古いが枯れている
- NVIDIA と長年の実績がある
- トラブル時の情報が多い
- CUDA / Vulkan / Proton との相性が安定
結論だけ言うと、
NVIDIA をフルパワーで使うなら、2025年はXorg が現実解です
(今後おそらく徐々にWaylandに移行するでしょうが)
nouveau と nvidia の違い(ここが最大の混乱ポイント)
nouveau とは
- NVIDIA GPU 用の オープンソースドライバ
- Debian インストール直後のデフォルト
- 中身は見えるが性能は弱い
- CUDA 不可、ゲーム用途は厳しい
nvidia(プロプライエタリ)とは
- NVIDIA 公式ドライバ
- 中身は非公開
- 性能・互換性・機能は最強
- CUDA / Vulkan / AI / ゲーム必須
つまりこのシリーズでやることは、
nouveau を完全にやめて、nvidia に切り替える
ただそれだけ。
ただし 中途半端に共存させると即地獄。
組み合わせを一度、完全に整理する
| 表示システム | GPUドライバ | 状態 |
|---|---|---|
| Wayland | nouveau | 動くが遅い・不安定 |
| Wayland | nvidia | 動く場合もあるがトラブル報告多い |
| Xorg | nouveau | 動くが性能不足 |
| Xorg | nvidia | 最安定・最高性能(今回のゴール) |
このシリーズの最終形は、
Xorg + nvidia に固定します。
Debian 13 の初期状態はどうなっているか
Debian 13 + GNOME を普通にインストールすると、だいたいこうなります。
- 表示システム:Wayland(GNOMEデフォルト)
- Intel iGPU:i915 ドライバ
- NVIDIA GPU:nouveau(または未使用)
体感としては、
Wayland + nouveau で「とりあえず映っている」状態
ここから一歩ずつ、
確実に・壊れない順序で 進めていきます。
なぜ「最初は Wayland のまま作業する」のか
いきなり Xorg に切り替えると、
- コピー・ペーストが不安定
- 設定変更中に表示が乱れる
- トラブル時に原因が切り分けにくい
そのため本シリーズでは、
- 導入作業は GNOME Wayland のまま
- NVIDIA ドライバが完全に入ったあと
- 最後に Xorg に固定
という順序を取ります。
これは 安全側に倒した設計です。
Secure Boot を無効前提にする理由
NVIDIA のプロプライエタリドライバは、
- カーネルモジュールをロードする
- DKMS により動的にビルドされる
Secure Boot が有効だと、
- モジュール署名
- 鍵管理
- 起動失敗
など 余計な地雷が増えます。
このシリーズでは、
Secure Boot は無効化できる人向け
と明示します。
これは逃げではなく 再現性優先の判断です。
このシリーズのゴール(明確に定義する)
最終的に目指す状態はこれです。
- Xorg 上で GNOME が動いている
- NVIDIA プロプライエタリドライバがロードされている
nvidia-smiが正常表示- CUDA / Vulkan / OpenGL がすべて有効
- Steam / Proton / AI / OBS が動く
- トラブっても 自力で戻れる
「動いた気がする」では終わらせません。
次回予告
次回(第1回)は、
NVIDIAで詰まないための事前準備と物理退避戦略
- BIOS / Secure Boot
- モニターケーブル退避
- iGPU を使った保険ルート
- 再インストール判断基準
壊す前に、戻り道を作る回です。

